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2009年04月19日(日)

2 平穏 【初恋】

これまでのお話(下に行くほど古いです)
1 序章 【会議】
       【白い箱】
       【脱走】


2 平穏 【決断】
       【三神兵】
       【道化】

【More・・・】

「さっきから何だか自分がおかしい……」
舞は先ほど何度も独り言をぶつぶつ呟きため息をついている。
「こんな気持ちになるのは生まれては初めてかもしれない。」
また舞は呟き長く息を吐いた。


舞は普段、翔と一緒にいることが多いが、たまに1人でふらりと散歩に出ることがある
そういう時は、決まって近くの公園の屋台へ向かう。
そこには簡素な遊具ぐらいしかなく一見殺風景に見えるが、そこには時々屋台が訪れ、たこ焼を焼いている。以前小夏と喫買出しに行った時にその屋台のたこ焼を一口食べてからすっかり舞はたこ焼の虜となっていた。

「おぅ、嬢ちゃんか!そろそろ来る頃じゃねぇかと思って焼いといたぜ!!」
屋台の親父とは既に顔見知りになっていた。いつも大体決まった時間に訪れるので、屋台の親父もそれに合わせてたこ焼を焼いてくれていた。
「いつも助かる…。」
そういって舞は、カウンターに座り焼きたてほかほかのたこ焼を口にした。
「う~ん♪おひちゃんのたほやきおいち~もふもふ~」
たこ焼を食べてる時の舞は、まるで別人で普段の凛々しい顔が崩れ満面の笑みを浮かべているのであった。
「嬢ちゃん。いつも笑顔で褒めてもらえるのは嬉しいが、食べながら話すな!火傷すんぞ!」
「あひ~」
たこ焼を3パック程食べると舞は親父にこう言った
「あぁ、そだそだ。妹にも食べさせてあげたいからお持ち帰りしたい~」
「おぅ食べさせてやんな!!」
親父は、焼きたてのたこ焼を箱に詰め、袋に入れて舞に手渡した。
「今度は妹さんも一緒に連れてきなよっ!!」
「あい~。」
妹の喜ぶ顔を想像しながら、笑顔でスキップしながら家路につく舞。そこへ人参色の髪をした少年が、舞の持つたこ焼の匂いに惹かれて近づき、話しかけてきた。
「なんだ?うまそうなにおいだな?」
少し頭の悪そうな喋り方をする少年だったが、舞は美味しいたこ焼を褒める少年に機嫌よく会話を始めた
「おぉ、これが『美味そう』と言うか…なかなかわかる奴じゃないか!そうだな、2パックあることだし、1パック一緒に食べようじゃないか」
「おぉ、いいぜ!くおう、くおう!!」
妙に意気投合した、二人は近くのベンチに座り、たこ焼を食べ始めた。
「うほっ!!うめ――――!!」
「そうだろ、そうだろ。おいちゃんのたこ焼は、世界一だからなっ!!」
そういいながら美味しそうにたこ焼を食べる少年は笑顔が眩しいぐらいに輝いていた。
「そういえば、自己紹介がまだだったな。私は、澤田舞。今はこの近くの喫茶店で、手伝いをしている。」
「お、おれは、タイニスってんだ!よろしくなっまい。」
タイニスはそう言うと、手を差し出した。どうやら舞と握手がしたいらしい。舞も彼にどうじて手を伸ばした。そしてお互いの手が握られた。
「………。」
「………。」
暫く妙な沈黙が流れた。
「なんか、このてはなしたくねぇなぁ~なんでだかよくわかんねぇけど」
そう呟くタイニスの頬は、少しだけ紅く染まっていた。…
「………。」
舞は、凄く戸惑っていた。そう舞も同じように『この手を離したくない』となぜか思っていたのだ…。「自分もなぜか同じ気持ちだ」とタイニスに伝えたいのに喉の奥で何かがつっかえて言葉にならない。その変わりに口に出した言葉は
「また…明日も来る…。お前も来てくれるか?べっ、別に用事があるんなら…いいけど…。」
「あぁ、またぜってーまいにあいにくるぜ!!」
再び会う約束をして二人は別れた。その後からだろうか、舞はなんだかもやもやした気持ちを抱えていた。

一方タイニスももやもやした気持ちを同僚のネイラスに話した。ネイラスは賢いのできっと何か素晴らしい答えを出してくれるはず。タイニスはネイラスを信頼していた。
「なぁ…ネイラス…うまくいえねぇんだけどよ」
そう言い出すと、ネイラスは舞と出会った事を話しだした。
話を全て聞いたネイラスはなぜか嬉しそうだった。
「おぉ、タイニス!!それは恋ですよ!!お前も大人になったんですね!!きっとお前は、その『舞さん』が好きなのですよっ!!」
「うぉぉぉぉぉぉーなんだがこっぱずかしいなーー。でも、なんかすっきりした。さっすがネイラスものしりだよなー」
「礼には及びませんよ。舞さんと結ばれること祈ってますよ。私も、助力します」
ネイラスは、タイニスの手をぎゅっと握った。
「いよっっしゃ――――――!!何かもえてきた――!!!ちょっとはしってくるぁ」
というとタイニスは、走りながらネイラスの部屋を後にした。
「ふふふ、これで私にも勝算がでてきましたね。シルベイラ様…」
そう、シルベイラはタイニスに思いを寄せタイニスは舞を好きになり、ネイラスはシルベイラに恋をしていた。

一方舞の方はというと、
「ふぅ――――――」
「どうしたんですか?姉さん。たこ焼屋さんから帰ってきてから元気ないですよ?」
翔は、舞のお土産のたこ焼をほほばりながら、いつもとは明らかに様子の違う姉を気遣った。舞は翔に心配をかけまいと平静を装おうとした。。
「心配するな。……でも、少し疲れているかもしれないな……。そうだ、小夏女医を呼んできてくれないか?薬を処方してもらおう。」
「そうですね!呼んできます。」
翔は、元気がない姉が心配なのかいつもより早足で小夏を呼びに行った。
「薬でなんとかなるものなのかはわからないけどな……。」
舞はそう小さく呟いた。
暫くするとドアをノックする音が聞こえた。
「舞ちゃ~ん。小夏先生ですよ~入ってもいいかしら?」
「あぁ。」
舞は、そう返事をして小夏を招き入れた。
「な~んか込み入った話みたいだから、過剰に心配させないように翔ちゃんには、喫茶店の仕事を任せたわよ~。」
小夏は変な所で察しがいい。しかし、きっと彼女ならこのもやもやした気持ちの正体も見極めてくれるだろう。そう思った舞は、腹を括って洗いざらい全て小夏に話した。
「うふふふふふふふふふふふふふふふふふ~今日は、お赤飯ね~」
突然意味不明な事を言い出した小夏に舞は、当然のように疑問を投げかけた。
「確か『せきはん』って目出度い時に食べるものだよな??これはお目出度いことなのか??」
「そうよ~。とってもお目出度いこと~♪そうね舞ちゃんは、もうちょっと自分の気持ちに素直になったほうがいいわよ☆さーて、今日はお赤飯ってエリックに言わなきゃ~」
そう言うと、小夏は楽しそうに鼻歌を歌いながら部屋を後にした。
その日の晩御飯は勿論赤飯だったらしい。でも、舞には、未だまやもやとした気持ちが残ったままだった。

テーマ : 自作小説 - ジャンル : 小説・文学

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