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2009年04月19日(日)

2 平穏 【幸せは崩壊の足音】

いよいよストーリー展開が半端なくしんどくなります(いろんな意味で)

これまでのお話

1 序章 【会議】
       【白い箱】
       【脱走】


2 平穏 【決断】
       【三神兵】
       【道化】
       【初恋】

【More・・・】

あの日から舞とタイニスは、頻繁に会うようになった。
いつもの公園をただ二人で歩いたり、屋台が出てればそこで料理されてるものを食べたり。でも、それ以外にただ何をするわけでもなく、ただ一緒にいることにお互い満足していて

二人は『しあわせ』だった。
舞は、タイニスに会ったその日は、朝まで部屋に引き篭るようになり、毎日溜息ばかりついていた。
「私も翔みたいにもっと女らしくしてみたら…タイニスも喜んでくれるだろうか?……。」と、暫く考え込んでは、
「あーーーーもうなんかそんなの凄く似合わない…きっと多分…。」
そんな葛藤の繰り返しだった。
一方タイニスも、
「うぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーなんかもうぐわっといかねぇのか!?」
舞との関係が進展しないことに悩んでいるようだった。

舞はレイラのお下がりのひらひらとフリルのついた洋服を眺めてはたたんでそしてまた広げては眺めたたむという動作を繰り返していた。どうやらこの服を着たいのだが自分に似合うかどうかわからずに悩んでいるようだ。同じことで延々と悩んでいると不意に部屋の戸をコツコツ叩く音が聞こえた。
翔が喫茶の仕事を終えて帰ってきたのだろうか?慌てて洋服をクローゼットに放り込みドアを開けた。すると、ドアの向うには妹の翔ではなく小夏が立っていた。
「……なんだ小夏女医か…。」
「あらあら、これでも私舞ちゃんのこと心配してるのよ~何でもいいからお姉さんにどーんと話してごらんなさい!!」
どうやら小夏は舞の悩みを見透かしているようだった。舞は素直に小夏に今自分が抱えている気持ちを話した。早くこのもどかしい思いを解決したかった。喉になにかがつかえていて吐き出せずにいたこの言葉を。誰かに話さずにはいられなかったのだ。
「よーし。そーいうことなら私にまかせなさーい。いい?舞ちゃんには舞ちゃんに合ったお洒落があるのよ~。小夏お姉さんが、今度舞ちゃんにぴったりのお洋服を用意してあげるわ♪ついでにレイラちゃんにお化粧道具も借りてきちゃいましょう♪うふふふふ~楽しくなってきたわ~。」
「協力はありがたいが…なんか面白がってないか?」
舞は浮かれている小夏を見つめまた溜息をついた。

一方タイニスもネイラスに自分がどうすべきかを相談をしていた。
「あれから彼女との進展はどうなんですか?」
「なんか、いまいっぽのところでふみだせねーんだよ。まいったなぁ…っておもってるしょうじき」
ネイラスは暫く指を唇に当てながら考えふけり、やがて一つの答えを導きだした。
「そうですね。今度のデード私が一緒に付き添いましょう。陰ながら身振り手振りでタイニスのすべきことを伝えるといいですよ。」
「さすがネイラスかしこいぜ!!」
なぜこうもネイラスはタイニスに協力的なのか?彼には打算があった。タイニスが舞と結ばれてしまえば、シルベイラの寵愛を独り占めできるという目論見だ。
「これが上手くいけば彼女のすべてが…。」
ネイラスは、タイニスに悟られぬよう小声で呟きニヤリと笑った。

そして、二人が会う約束をした当日の日がやってきた。舞は普段のデニムのパンツにパーカーというスタイルではなく、ブラウスにストールを纏いロングスカートを履き、靴は厚底のブーツだった。軽くレイラに化粧もしてもらった、ケバケバしない程度のナチュナルメイクだ。待ち合わせの場所で、いつもと違った格好の舞にタイニスは驚いた。
「やっべ、きょうのまい。すっげーかわいい!!。」
今まで『可愛い』と自分のことを形容された事がなかった舞は、暫くキョトンとしていたが、すぐに
「べっ…別に…そういうわけじゃ…。」
と、照れていた。質問の答えにはなっていない。呂律が回らない。化粧のせいなのか頬が異様に熱い気がする。
「じゃ、いこうぜ!!」
タイニスは舞の手をそっと握った。
「え、、、、?」
思わず舞はタイニスの手を振り払った。実は何度も会ってはいるがこうして意識して男性の手を握ったことが今までなかった舞はとっさにタイニスを拒絶してしまった。
「あっ、別に嫌じゃないんだ…ちょっとな…。」
今度は舞の方からタイニスの手を握った。絡んだ指、握った手の平からタイニスの体温が伝わってくるおそらくタイニスも自分の体温を感じとっているのだろう。そんな事を考えると舞の頭は急クラクラしてきたので考えるのをやめた。
「じゃぁ、あらためてしゅっぱつだー」

その二人の様子を見守る2人がいた
(うふふふ~若いっていいわね~うん。『お洒落さん大作戦』まずは大成功ね☆)
(おい!!小夏!覗きなんて趣味が悪いぞ!!)
(あらあら~こうして一緒に来ちゃってるリカちゃんも共犯よねっ♪)
(俺はお前を止めにきただけだ!!)
(シーッ!!2人に気付かれるだけよ!!)

さらに別のところからタイニスに合図を送る一人の男がいた
(まずは、作戦成功といったところですね…。でも…あの少女……どこかで見た覚えが…)

舞もタイニスも最初はお互いの行為にドキマギしていたが、次第にいつものふたりにもどり楽しく散歩や食事を楽しんだ。

(あーもうあの赤毛君ももうちょっとこう舞ちゃんに肩回すとかーする――!!)
(それができるなら、とうにやってるだろう。恐らく機会を伺ってるんじゃないか?)
(あら~リカちゃんも立派な『覗き屋さん』ね。うん♪間違いなく共犯☆)
(……)

(見ていて何かイライラしますね……まぁそこにタイニスも悩んでいたのだから仕方ないのでしょうけど…もう少しそこタイニスも押さないと……)

3人の思惑とは裏腹に2人はいつも通りのコースを辿っていった。次第に日も暮れ別れの時間が迫ってきた。

(キャー。いよいよお別れのちゅーね!!いっけー赤毛君!!)

(タイニス!!次の作戦ですよ!!お前の漢気見せてやるんです!!)

「じゃぁ、また・・・。」
舞はいつものように別れを告げると、
「まて!!」
タイニスは舞をひき止め、そのまま彼女を抱き寄せ彼女の唇に自分の唇を重ねた。舞もタイニスを受け入れ身を委ねた。キスが終わるとタイニスは舞に向かってこう言った。
「ずっとこれからもおれといっしょにいてくれないか?」
舞の口から言葉が出て来ない。さっきから胸の動機が激しくて息をするのも苦しかった。舞は何度も首を縦に振ることでタイニスの気持ちを受け入れる意思を示した。

一方傍観者の方では、険悪な雰囲気が広がっていた。
「やはり…あの少女は『澤田舞』…。そして貴方はリカルド義兄さんですね?」
舞とタイニスのキスシーンで思わず立ち上がってしまった小夏を止めようとしたリカルドはふと近くにいた男性と目が会った。それは、ある事件をきっかけに行方知らずとなっていた義弟のネイラスであった。小夏は心配そうにリカルドの顔色を伺っている。
「ネイラス…まさかお前…。」
「そう。私はあの事件の後、三神兵としての組織に所属しましてね。あの澤田姉妹は我が研究施設の絶好のサンプルだったんですよ…しかしそれを『何者か』が施設を壊してしまったんですよねぇ?…」
ネイラスは、全てを理解した上であえて義兄に嫌味を吐いた。
「俺達と敵対してる関係そう言いたいんだな?」
「そんなに熱くならないでくださいよ。義兄さんらしくもない…今日は、私の仲間の恋路を見守ってきただけです。……そうですね。こちらの準備が整い次第また改めて伺いましょう……。」
そういうとネイラスは高笑いしながら去っていった。
「小夏!!帰ったらすぐエリックに報告、今後喫茶は営業停止だ!!臨戦状態にするぞ!!」

舞とタイニスの幸せとは裏腹に影から何かが角砂糖のようにもろく崩れ去ろうとしていた。

テーマ : 自作小説 - ジャンル : 小説・文学

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