2009年06月02日(火)
3 崩落 【楼閣】
今まで書きたかったリカちゃんの過去話がかけてよかったです。これで、なっちゃん、リカちゃん&ネイラス、シルベイラ様の昔話が出揃いました。澤田姉妹とアレンとタイニスは今後の展開で明らかになります。エリックの過去話はちらっと番外編で出ましたね。別にライラさんは過去に重いものを背負ってるわけでもないので、書くとしたらエリックとの出会いを番外編あたりで書けたらいいななんて思ってます。
前回までのお話
1 序章 【会議】
【白い箱】
【脱走】
2 平穏 【決断】
【三神兵】
【道化】
【初恋】
【幸せは崩壊の足音】
3 崩落 【亀裂】
【閉塞】
リカルド13歳ネイラス10歳の頃悲劇は起こった。以前から問題視されていた家督問題が表面化してきたのである。
「実子であるネイラスより優秀で母魔法の才もあるリカルドこそガーゴイド家に相応しい人間だ」
「いくら優秀であったとしてもやはり嫡子に家督を譲るほうが後で面倒なことにならずに済むのではないか?それにやはり『魔女の子』に家督を譲るのは得策ではない。」
リカルドは、父がガーゴイド家の遠縁の親戚であり、母は魔女であった。富豪と魔女の結婚に周囲からの理解は得られず、二人は駆け落ちをした後、リカルドを産んですぐ両親は不運な事故でこの世を去り、それを哀れに思った本家ガーゴイド家の夫妻が周囲の反対を押し切り引き取った。しかし、当主夫妻の元にも息子が生まれ、その子供はネイラスと名づけられた。
これが家督騒動の発端でもあった。
当初、当主は「リカルドに家督を譲るつもりはない」と断言していたが、リカルドは頭のキレる人間に成長し、周囲の大人も舌を巻くほどの雄弁っぷりを見せた。親族の中には「彼こそ家督を継ぐに相応しい」と称える者も現れ始めた。一方ネイラスは人見知りで気が弱い少年であり、周囲からは家督を継ぐには頼りなく思う者もいた。
当時のネイラスとリカルドにとって『家督』というものは、どうでもいいものであって、いつまでも家族みんなで幸せに暮らしていければそれで満足だと思っていた。
そして悲劇が起こったその日も『家督』を巡って親戚が集まり言い争っていた。リカルドは、正直この集まりに辟易していた。自分はただ「家族」と共に平穏に暮らしたいだけなのに……。リカルドは、ある決意を胸に親族の集まりに参加しようとした。
自分に『家督』を継ぐつもりがないことをつげよう。そしてネイラスが家督を継げばすべてが丸く収まる。
もともと養ってもらっている身分の自分にそんな権利等ないのだから……。
リカルドが応接室のドアをノックし入室しようとしたその時であった。
リカルドの指先から炎が溢れ出し、ドアを焼き尽くした。その後もリカルドから放たれる炎の勢いは留まらず、数分でガーゴイド家の豪邸を焼き尽くした。リカルドの魔法の力が突如暴走したのであった。
少年期における魔法使いの魔力の暴走は、幼少の頃に親に魔法の制御の呪いを施すのが慣わしだが、幼くして母を亡くしたリカルドにはその呪いが施されていなかったことから、今回の惨劇を生むことになってしまった。
家屋は勿論応接室に居た親族や召使いも逃げる間もなく消し炭となっており、人の形を留めていなかった。
突然失った家族と家にただリカルドは立ち尽くすばかりであった。
「あの時私は、外出中難を逃れたわけですが、まさかこんなことになってたとは……ね?覚えていますか?ここがちょうどその応接室ですよ。」
続けてネイラスは言葉を紡いだ。
「私は、家族を失い、帰るべき家も失った。貴方のせいでね!!それを今貴方はどうです?この人達と『家族ごっこ』でもなさっているのですか?そんなことを私が許すとでも?!」
ネイラスの言う通りリカルドにとってエリックやアレン達は「家族」のように大事に思ってきた。願わくはこの幸せが続けばとも思った。
たくさんの人を不幸の底に落とした自分は、幸せを願うことすらも許されないのだろうか?。
リカルドは、唇を噛み締め俯いたまま立ちつくしていた。
「このままじゃ埒があかねぇ!!アレン、翔ちゃん。レイラの救出を優先させるぞ、今のリカちゃん達には戦意がまるでない!!俺達だけでも動くぞ!!」
消沈としているリカルドや小夏、ましてや、恋い慕っていた相手が敵だったということに愕然としている舞は到底戦力になりそうもない。そう判断したエリックは、ネイラスとの戦闘よりもレイラの救出を優先させようとした。
「そう簡単にお姫様が救出できると思わないでくださいよ。」
ネイラスの言葉の狂気が今度はエリック達に向いた。
前回までのお話
1 序章 【会議】
【白い箱】
【脱走】
2 平穏 【決断】
【三神兵】
【道化】
【初恋】
【幸せは崩壊の足音】
3 崩落 【亀裂】
【閉塞】
【More・・・】
ガーゴイド家は、表向きは資産家だが、裏では情報処理家系としてその筋では有名であり、隠密的役割を担っていた。勿論、リカルドやネイラスもその力は両親等に叩き込まれており、幼いながらも頭脳は優秀であった。リカルド13歳ネイラス10歳の頃悲劇は起こった。以前から問題視されていた家督問題が表面化してきたのである。
「実子であるネイラスより優秀で母魔法の才もあるリカルドこそガーゴイド家に相応しい人間だ」
「いくら優秀であったとしてもやはり嫡子に家督を譲るほうが後で面倒なことにならずに済むのではないか?それにやはり『魔女の子』に家督を譲るのは得策ではない。」
リカルドは、父がガーゴイド家の遠縁の親戚であり、母は魔女であった。富豪と魔女の結婚に周囲からの理解は得られず、二人は駆け落ちをした後、リカルドを産んですぐ両親は不運な事故でこの世を去り、それを哀れに思った本家ガーゴイド家の夫妻が周囲の反対を押し切り引き取った。しかし、当主夫妻の元にも息子が生まれ、その子供はネイラスと名づけられた。
これが家督騒動の発端でもあった。
当初、当主は「リカルドに家督を譲るつもりはない」と断言していたが、リカルドは頭のキレる人間に成長し、周囲の大人も舌を巻くほどの雄弁っぷりを見せた。親族の中には「彼こそ家督を継ぐに相応しい」と称える者も現れ始めた。一方ネイラスは人見知りで気が弱い少年であり、周囲からは家督を継ぐには頼りなく思う者もいた。
当時のネイラスとリカルドにとって『家督』というものは、どうでもいいものであって、いつまでも家族みんなで幸せに暮らしていければそれで満足だと思っていた。
そして悲劇が起こったその日も『家督』を巡って親戚が集まり言い争っていた。リカルドは、正直この集まりに辟易していた。自分はただ「家族」と共に平穏に暮らしたいだけなのに……。リカルドは、ある決意を胸に親族の集まりに参加しようとした。
自分に『家督』を継ぐつもりがないことをつげよう。そしてネイラスが家督を継げばすべてが丸く収まる。
もともと養ってもらっている身分の自分にそんな権利等ないのだから……。
リカルドが応接室のドアをノックし入室しようとしたその時であった。
リカルドの指先から炎が溢れ出し、ドアを焼き尽くした。その後もリカルドから放たれる炎の勢いは留まらず、数分でガーゴイド家の豪邸を焼き尽くした。リカルドの魔法の力が突如暴走したのであった。
少年期における魔法使いの魔力の暴走は、幼少の頃に親に魔法の制御の呪いを施すのが慣わしだが、幼くして母を亡くしたリカルドにはその呪いが施されていなかったことから、今回の惨劇を生むことになってしまった。
家屋は勿論応接室に居た親族や召使いも逃げる間もなく消し炭となっており、人の形を留めていなかった。
突然失った家族と家にただリカルドは立ち尽くすばかりであった。
「あの時私は、外出中難を逃れたわけですが、まさかこんなことになってたとは……ね?覚えていますか?ここがちょうどその応接室ですよ。」
続けてネイラスは言葉を紡いだ。
「私は、家族を失い、帰るべき家も失った。貴方のせいでね!!それを今貴方はどうです?この人達と『家族ごっこ』でもなさっているのですか?そんなことを私が許すとでも?!」
ネイラスの言う通りリカルドにとってエリックやアレン達は「家族」のように大事に思ってきた。願わくはこの幸せが続けばとも思った。
たくさんの人を不幸の底に落とした自分は、幸せを願うことすらも許されないのだろうか?。
リカルドは、唇を噛み締め俯いたまま立ちつくしていた。
「このままじゃ埒があかねぇ!!アレン、翔ちゃん。レイラの救出を優先させるぞ、今のリカちゃん達には戦意がまるでない!!俺達だけでも動くぞ!!」
消沈としているリカルドや小夏、ましてや、恋い慕っていた相手が敵だったということに愕然としている舞は到底戦力になりそうもない。そう判断したエリックは、ネイラスとの戦闘よりもレイラの救出を優先させようとした。
「そう簡単にお姫様が救出できると思わないでくださいよ。」
ネイラスの言葉の狂気が今度はエリック達に向いた。
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