2011年04月19日(火)
4 愛情 【叱咤】
お姉さん復活の巻です。
目次
1 序章 【会議】
【白い箱】
【脱走】
2 平穏 【決断】
【三神兵】
【道化】
【初恋】
【幸せは崩壊の足音】
3 崩落 【亀裂】
【閉塞】
【楼閣】
【反撃】
【犠牲】
4 愛情 【恋敵】
人が何度も死んでいくところなんて何度も見てきたはずだ。
死んだ人間は、ただそれまでしか生きられない運命なのだ。
自分だっていつか必ず遅かれ早かれ「死」を迎える。
何も臆することはない。怯える必要もない。
そう割り切って自分も人を殺めてきたこともあった。
タイニスも所詮は、「ただそれまでの運命」の人間だったのだろうか?
まだ、彼には伝え切れていない思いがたくさんあるのに
まだ、一緒にやりたいことだってたくさんあるのに
「どうしてタイニスが…」
そう舞が呟くと、あの時流しつくしたと思った涙がまた舞の頬を伝った。
もう何も考えられない…いや、「考えたくない」という方が正しいのかもしれない。
考えると胸の奥がぎしぎしと嫌な音を立てる。
ひょっとしたら、自分がこうして人の死に苦しんでいるように、きっと自分が殺めてしまった人間の中にも自分と同じような思い、もしかしたらもっと苦しんでいる人がいたかもしれないと思うと息が詰まる思いだった。
何度思考を巡らせても自分の中にある矛盾が追突しつづけ、もう、舞はどうしたらいいのかわからなくなっていた。
そんな舞は答えの出てこない葛藤を続け、部屋に籠り続け妹の翔とも言葉を交わさずただベッドに伏せて涙を流す日々が続いた。
「姉さんはもう私ともあまり話をしなくなりました……。今までは生返事もあったんですが最近はそれすらもなくて…。」
姉を気遣った翔は、医師である小夏に相談していた。
「ん~。それは、重傷ね……。メンタルな部分においては、最終的にその人が心を閉ざしたままでは、周りの励ましやアドバイスは無意味なものになってしまうのよ~。」
小夏はそういうと、小さく溜息をついた。
「どうにかならないんすか!!なんていうかその翔さんと舞さんには元気でいて欲しいっす。」
傍で聞いていたアレンも口を挟んだ。小夏は、天を仰ぎ暫く考え込んだ後、アレンに向かってこう提案した。
「アレン君?本当に舞ちゃんに元気になってもらいたい?」
「もちろんっす!」
アレンは即座にはっきりと答えた。
「わかったわ…ちょっと荒っぽい方法かもしれないけどけど、アレン君にならできるはずよ。できるわよね?」
あの日からどのくらいの時間が経っただろうか?
気が遠くなるほどの時間が経っているような気もしたが、あの光景がつい数秒前のことのように目の前に浮かぶ。深い悲しみは舞の時間の感覚も奪っていった。
そこにひとつの鮮烈な感覚が舞い降りた。
「痛っ…」
頬に痛みを感じた舞が顔を上げて睨み付けた先には、アレンのが舞の襟を掴み上げ手を上げていた。どうやら舞は、アレンに叩かれたようだ。するとアレンはもう一度舞の頬を平手で叩いた。
「いつまでそうやってれば、気が済むんだよ!!」
いつにないアレンの荒々しい口調に舞は暫く驚いていた。
「あんたの大事な妹があんなに心配してんだぞ!!それともあんたは妹が大事じゃなかったっていうのかよ!!」
そういうと、アレンは部屋の外で心配そうに二人を見守ってる翔を指さした。
「それは…。」
確かに、ずっと同じ部屋にいたのに翔の顔を見たのは随分久しかった。アレンの言葉に反論できない舞は黙って俯いた。
「確かに、恋人っていう大切なもの失ったのって凄く辛くて悲しいことかもしれない。でも……せめてもうひとつのあんたの大切な人まで傷つけないで欲しくないっ!!…。翔さんだって舞さんときっと同じくらい舞さんのこと本当に大切だって思ってること忘れないで欲しいっす……」
アレンは、思っていた。例え自分が翔と一緒になれずとも、自分と同じいや、それ以上に翔の幸せを想っている舞が彼女を護ってくれていれば、翔はきっと笑顔で幸せにしていられると、自分はそれを近くで見ていられれば、それで充分だと。アレンはその言葉を飲み込み更に言葉を続けた。
「それに、翔さんだけじゃない隊長やリカルド兄貴、オーナーになっちゃん。勿論俺だって舞さんと翔さんには、いつものように仲良く笑顔で居て欲しいっすよ…。そこだけは忘れないで欲しいっす。」
アレンの言葉に舞は暫く唇をかみしめたあと、小さな声でアレン翔に行った
「……すまない…少し、時間をくれ一人で考えたいんだ。」
舞のその言葉にアレンは、頷きそのまま翔を連れて部屋を後にした。
その日夜翔は、離れにある小夏の部屋で、小夏と一緒に過ごすことになった。
翌朝、小夏の部屋で翔がゆっくり目を開けるとそこには、姉の舞の姿があった。
「よく、眠れたか?」
まだ、自分は寝ぼけているのだろうか?翔は、何度か目を擦った。
「にゅ~ん?ふにゅ …………へぁ?あれ???姉さん。もう調子の方は大丈夫なんですか?」
「たまには、二人きりで何処か出かけてみないか?と思って…な。いやか?」
翔は、自分の問いかけに舞が答えなかったことを少し疑問に思ったが、やはり久々にちゃんと自分に向けられた声に嬉しくなり顔をほころばせこう答えた。
「えへへ~。姉さんと二人きりで外をお散歩だなんて、初めてで嬉しいですね♪」
目次
1 序章 【会議】
【白い箱】
【脱走】
2 平穏 【決断】
【三神兵】
【道化】
【初恋】
【幸せは崩壊の足音】
3 崩落 【亀裂】
【閉塞】
【楼閣】
【反撃】
【犠牲】
4 愛情 【恋敵】
【More・・・】
舞は、タイニスの死から未だに立ち直れずに居た。人が何度も死んでいくところなんて何度も見てきたはずだ。
死んだ人間は、ただそれまでしか生きられない運命なのだ。
自分だっていつか必ず遅かれ早かれ「死」を迎える。
何も臆することはない。怯える必要もない。
そう割り切って自分も人を殺めてきたこともあった。
タイニスも所詮は、「ただそれまでの運命」の人間だったのだろうか?
まだ、彼には伝え切れていない思いがたくさんあるのに
まだ、一緒にやりたいことだってたくさんあるのに
「どうしてタイニスが…」
そう舞が呟くと、あの時流しつくしたと思った涙がまた舞の頬を伝った。
もう何も考えられない…いや、「考えたくない」という方が正しいのかもしれない。
考えると胸の奥がぎしぎしと嫌な音を立てる。
ひょっとしたら、自分がこうして人の死に苦しんでいるように、きっと自分が殺めてしまった人間の中にも自分と同じような思い、もしかしたらもっと苦しんでいる人がいたかもしれないと思うと息が詰まる思いだった。
何度思考を巡らせても自分の中にある矛盾が追突しつづけ、もう、舞はどうしたらいいのかわからなくなっていた。
そんな舞は答えの出てこない葛藤を続け、部屋に籠り続け妹の翔とも言葉を交わさずただベッドに伏せて涙を流す日々が続いた。
「姉さんはもう私ともあまり話をしなくなりました……。今までは生返事もあったんですが最近はそれすらもなくて…。」
姉を気遣った翔は、医師である小夏に相談していた。
「ん~。それは、重傷ね……。メンタルな部分においては、最終的にその人が心を閉ざしたままでは、周りの励ましやアドバイスは無意味なものになってしまうのよ~。」
小夏はそういうと、小さく溜息をついた。
「どうにかならないんすか!!なんていうかその翔さんと舞さんには元気でいて欲しいっす。」
傍で聞いていたアレンも口を挟んだ。小夏は、天を仰ぎ暫く考え込んだ後、アレンに向かってこう提案した。
「アレン君?本当に舞ちゃんに元気になってもらいたい?」
「もちろんっす!」
アレンは即座にはっきりと答えた。
「わかったわ…ちょっと荒っぽい方法かもしれないけどけど、アレン君にならできるはずよ。できるわよね?」
あの日からどのくらいの時間が経っただろうか?
気が遠くなるほどの時間が経っているような気もしたが、あの光景がつい数秒前のことのように目の前に浮かぶ。深い悲しみは舞の時間の感覚も奪っていった。
そこにひとつの鮮烈な感覚が舞い降りた。
「痛っ…」
頬に痛みを感じた舞が顔を上げて睨み付けた先には、アレンのが舞の襟を掴み上げ手を上げていた。どうやら舞は、アレンに叩かれたようだ。するとアレンはもう一度舞の頬を平手で叩いた。
「いつまでそうやってれば、気が済むんだよ!!」
いつにないアレンの荒々しい口調に舞は暫く驚いていた。
「あんたの大事な妹があんなに心配してんだぞ!!それともあんたは妹が大事じゃなかったっていうのかよ!!」
そういうと、アレンは部屋の外で心配そうに二人を見守ってる翔を指さした。
「それは…。」
確かに、ずっと同じ部屋にいたのに翔の顔を見たのは随分久しかった。アレンの言葉に反論できない舞は黙って俯いた。
「確かに、恋人っていう大切なもの失ったのって凄く辛くて悲しいことかもしれない。でも……せめてもうひとつのあんたの大切な人まで傷つけないで欲しくないっ!!…。翔さんだって舞さんときっと同じくらい舞さんのこと本当に大切だって思ってること忘れないで欲しいっす……」
アレンは、思っていた。例え自分が翔と一緒になれずとも、自分と同じいや、それ以上に翔の幸せを想っている舞が彼女を護ってくれていれば、翔はきっと笑顔で幸せにしていられると、自分はそれを近くで見ていられれば、それで充分だと。アレンはその言葉を飲み込み更に言葉を続けた。
「それに、翔さんだけじゃない隊長やリカルド兄貴、オーナーになっちゃん。勿論俺だって舞さんと翔さんには、いつものように仲良く笑顔で居て欲しいっすよ…。そこだけは忘れないで欲しいっす。」
アレンの言葉に舞は暫く唇をかみしめたあと、小さな声でアレン翔に行った
「……すまない…少し、時間をくれ一人で考えたいんだ。」
舞のその言葉にアレンは、頷きそのまま翔を連れて部屋を後にした。
その日夜翔は、離れにある小夏の部屋で、小夏と一緒に過ごすことになった。
翌朝、小夏の部屋で翔がゆっくり目を開けるとそこには、姉の舞の姿があった。
「よく、眠れたか?」
まだ、自分は寝ぼけているのだろうか?翔は、何度か目を擦った。
「にゅ~ん?ふにゅ …………へぁ?あれ???姉さん。もう調子の方は大丈夫なんですか?」
「たまには、二人きりで何処か出かけてみないか?と思って…な。いやか?」
翔は、自分の問いかけに舞が答えなかったことを少し疑問に思ったが、やはり久々にちゃんと自分に向けられた声に嬉しくなり顔をほころばせこう答えた。
「えへへ~。姉さんと二人きりで外をお散歩だなんて、初めてで嬉しいですね♪」
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