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2011年04月20日(水)

4 愛情 【ありがとう】

槙原敬之さんのHungry Spiderを聴いてたら、ダレがちになってた創作熱がフィーバーしてきたんだぜ!!

エンドロールでしっとりと流していただきたい。脳内で舞さんとタイニスを中心とした創作PVを作るのが楽しいです。(自分にもっと技術があればそれを形にもできるんでしょうけど;;)

目次
1 序章 【会議】
      【白い箱】
      【脱走】

2 平穏 【決断】
      【三神兵】
      【道化】
      【初恋】
      【幸せは崩壊の足音】

3 崩落 【亀裂】
      【閉塞】
      【楼閣】
      【反撃】
      【犠牲】

4 愛情 【恋敵】
      【叱咤】

【More・・・】

舞と翔は二人で外に出かけた。
白い箱に捕われていた頃は、翔の外出は許可されていなく、エリック達に救出されてからは他の仲間達と外に出ることが多く舞と翔の二人きりでどこかに出かけるのはこれが初めてであり、翔は嬉しそうに姉の後をついて歩いた。
しばらく二人は、特に言葉を交わすこともなく黙々と歩いていたが、やがて公園にたどり着いた。そう、舞とタイニスが初めて出会った公園だ。
「姉さんもこの公園よく来てるんですか?私もこの公園は大好きです。あっ、今の時間は噴水が出る時間なんですねー。うわぁ~。すご~い」
そう言いながら噴水を見上げる翔を見つめていると舞の頭の中にふとタイニスと出会った時の記憶が浮かんだ。
ここで自分は、タイニスと出会った。

会うときはいつもこの公園……。
あぁ、もっと二人で色々な場所に行って色々な物を見て色々な事を一緒に感じたかった。

舞は、思わず溜息をついていた。「いいや、ここには後悔する為に来たんじゃない。」と首を横に振り、たこ焼やの屋台がある方へと足を伸ばした。屋台では、親父がたこ焼を焼いている。親父は、舞の姿を見かけるといつもの調子で話しかけてきた。
「おぅ、嬢ちゃん!久し振りだな!噴水のとこにいる嬢ちゃんのそっくりさんは、もしかして妹さんかい?」
親父は、噴水の所に居る翔を指差して舞に訪ねた。舞は「あぁ。」と答えた。
「ひょ~嬢ちゃん達は双子ちゃんだったんかい!……おや?今日は嬢ちゃんの彼氏はどうしたんだい?」
親父の言葉に一瞬で表情が暗くなった舞は、首を横にふった。それを見た親父は、話題を切り替えた。
「ん~まぁ、若いうちはいろいろあるさ!!変なこと聞いちゃって悪かったな。ホラ今日はオジサンの出血吐血大サービスだ!!ほれっ!!」
そう言うと親父は、いつもより大目に盛り付けたたこ焼を舞に手渡した。舞は、それを受け取り、翔の元へと戻った。
暫く噴水に見とれていた翔は、我に返り、後ろを振り向くと、舞が噴水から少し離れた場所にある屋台で何かを買っている様子を見つけた。姉は何を買っているのだろうか?と期待しながら舞が戻ってくるのを待っていた。すると、袋を抱えた舞が翔の元へと戻って来たので翔も舞の方へと駆け寄ってきた。姉に近づくにつれ、たこ焼のソースの香ばしい香りが漂ってきた。
「わー。これ、もしかして時々姉さんが買ってきてくれるたこ焼ですか?でも、こんなに買って大丈夫ですか?」
舞が持ってきたたこやきの量は、年頃の女子二人が食べきれる量とは思えない程の量だった。だが、しかしたこ焼の魅力にとりつかれてしまった無類のたこ焼き好きの舞にとっては、その量を食べきるのは造作もないことだった。
「あぁ、たこ焼なら問題ない。さぁ、出来立てを一緒に食べよう。いつものより熱いから気を付けて食べるんだぞ」
そうして、舞と翔はベンチに腰かけ、袋に入れれたたこ焼を取り出した。翔は、ふーふーと口で冷ましたあと口にたこ焼をほおばったが、翔が口に含んだたこ焼は、思っている以上に熱く思わず
「あひゅーっ!」
とすっとんきょうな声を上げた。それでもなんとか飲み込み、バックからハンカチを取り出しぱたぱたとたこ焼をあおいだ。どうやら翔は熱々のたこ焼きをあおいで冷まそうとしているようだ。そんな翔を愛おしそうに見つめながら舞は、ゆっくりと口を開いた。
「翔。食べながらでいいから話、聞いてくれないか?」
急に改まった姉の口調に少し翔は首を傾げたが、すぐにこくりと頷いた。
「お前には話していなかったんだが、こんなことがあったんだ。」
舞は、タイニスという一人の男に出会ったこと、そして彼に対して芽吹いた気持ち、彼と過ごした短い時間そして思わぬ場所での再会、そして彼の最期。舞は時折 顔を真っ赤にさせたり、俯きがちになったり、時には涙を流したりしながら、これまであったことを妹の翔に話した。舞は誰と話す時も、妹相手にでさえ表 情や感情を表に出さずに淡々と話すことが多かった。翔は、初めて表情豊かに話をする姉の姿に驚いたが、いつの間にかたこ焼を食べるのも忘れ、姉の話を傾聴していた。
「……だが、アレンの言葉で目が覚めたよ。確かに私はタイニスの事に捕われすぎて、翔やエリック達に凄く心配をかけてしまった……。」
そう言うと舞は言葉を止めて黙ってしまった。すると翔が意外な言葉を口にした。
「姉さん…変わりました。今までの姉さんは、私以外の人には無関心だし、私にもあまり弱みを見せないっていうか、強がってるところがありました。きっとタイニスさんが姉さんをそういう柔らかい気持ちにさせてくれたんですね。お礼を言わなきゃ!!」
そう言って翔は、空に向かって
「タイニスさーんありがとうございまーす!!」
と叫んだ。

「ありがとう」

舞はタイニスの死からずっと迷い捜し求めていた答えを手に入れた気がした。
自分のことを好きになってくれて
傍にいてくれて
      守ってくれて

「そうだな。ありがとう…だな…。」
そう声にならない声でポツリと呟いた後、
「翔……お前も変わったな…強くなった。」
そう、舞が言って立ち上がると翔の頭を撫でた。舞は、今まで自分が妹を護っていくのだと思っていたが、まさか妹の言葉に自分が救われるとは思わなかった。
あの何時も怯えていた様な目をして他人に心を閉ざしていた翔が、自分達を守る術を身に付け、自分がどんなに探しても見つからなかった答えをいとも簡単に見つけ出してしまったのだがら、妹の成長を舞は素直に喜んだ。そんな舞の言葉に翔は照れながら
「そ、そうですか?自分ではよくわからないんですけど…姉さんがそう言うなら…。」
と微笑んだ。舞も一緒に少し微笑んだ後、深くため息をついて茂みを指差してこう叫んだ。
「お前達、いつまで隠れて見てるつもりなんだ!?悪趣味な事この上ないっ!」
舞が茂みに向かって問いかけると、そこからエリック、レイラ、アレン、小夏、リカルドがばつが悪そうに姿を現した。
「あら~。私達は舞ちゃん達が心配で様子を見に来たのよ~。」
小夏がそう反論すると、他の4人もうんうんと頷いた。
「二人とも大丈夫そうでよかったっす!!」
「まぁ、問題はなさそうだな。」
アレンとリカルドも相槌を打った。
「……そう…だな。皆には、色々と迷惑をかけた。すまなかった。」
そういって、舞は深々と頭を垂れた。翔も舞につられる様に
「姉妹共々皆さんには心配をお掛けしました。ごめんなさい」
と謝罪の言葉を述べ頭を下げた。するとレイラは、
「謝ることなんて何一つ無いわよ。私もみんなも舞さんや翔ちゃんの事が大好きで心配したり、想いあったりしてるんだから。ねっ、これからもよろしくね。」
と言って二人の肩をポンと叩いた。
「さて、二人とも元気になったみたいだし~。今日はパーティだな。」
エリックは笑ってそう言った。小夏もその言葉に嬉しそうに便乗した
「そうね~久々に私も腕を振るおうかしら?」
「ひゃっほーい!!今日は超ご馳走っすね!!俺腹減ったっす!!」
そう言ったアレンのお腹がぎゅる~と鳴り、全員が思わずそれに大笑いした。
「姉さん。たこ焼冷め切っちゃいましたね。」
翔は、すっかり冷めてしまったたこ焼を思い出し、心配した。
「温め直してまたパーティの時に食べればいいさ。」
「ふふっ、それもそうですね。」
こうして、またこの喫茶店「さとうがしのいえ」に二人の笑顔が戻った。

テーマ : 自作小説 - ジャンル : 小説・文学

22:04  |  さとうがしのいえ お話  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

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